トランプ大統領就任による日本への影響とは?
トランプ大統領就任による日本への影響とは?
2025年1月20日、ドナルド・トランプ氏がアメリカの第47代大統領に就任しました。多くの方がテレビや新聞でこのニュースをご覧になったことと思います。トランプ大統領は就任演説において「アメリカの黄金時代は今始まる」と宣言し、「アメリカ第一主義」の方針を強調しました。
今回は、トランプ大統領就任が、日本にどのような影響をもたらすと考えられているのか、関税・為替・金利・住宅などのお金周りを中心に解説していきます。
この記事の目次
1、トランプ大統領の就任演説は、どのような内容だった?
◉政策の主要方針
2、関税への影響
◉なぜ日本も関税対象国になるのか
◉特に影響を受ける可能性が高いとされる産業
◉相互関税
3、為替市場への影響
◉輸入コストの上昇により、原材料や部品の調達費用が増加
◉食料品や原油などの輸入品の価格が上昇
◉政策の不確実性
◉税制赤字の拡大
4、金利への影響
◉金利上昇圧力の増大
◉日銀の追加利上げ
◉住宅ローンの金利上昇
5、住宅市場への影響
◉建築コスト高騰
◉不動産投資
6、まとめ
1、トランプ大統領の就任演説は、どのような内容だった?
まず始めに、トランプ大統領がどのような方針で政策を実施しようとしているのか確認していきましょう。
トランプ大統領は就任演説の冒頭で「アメリカの黄金時代がいま始まる」と宣言し、トランプ政権における主要な方針を示しました。
◉政策の主要方針
・すべての政策判断において「アメリカを第一に考える」という明確な原則を掲げ、特に貿易、税制、移民、外交問題に関する各分野でアメリカの労働者とその家族の利益を最優先すると強調しました
・「バイ・アメリカン、ハイヤー・アメリカン」(米国製品を購入し、米国人を雇用する)を政策の柱として位置付け、米国内の製造業の復活や国内雇用の保護を明確にしました
・一般市民の声を反映させ国民の利益を優先する「国民のための政治」を目的として、アメリカの政治の中心であり、連邦政府や政治エリート「ワシントンの支配層」から市民への権力移譲を主張しました
その他、トランプ大統領は就任後も、大幅な関税の引き上げや、大規模な減税政策(個人所得税・法人税率の引き下げ)などを打ち出しています。
2、関税への影響
トランプ大統領の就任により、日本は新たな関税政策の影響を受ける可能性が高まっています。
2025年2月、トランプ大統領はすべての鉄鋼とアルミニウムの輸入に25%の関税を課すと発表しました。バイデン政権下では、一定量までの無税鉄鋼輸入枠が日本に対して設けられていましたが、日本は前回のトランプ政権時も鉄鋼・アルミニウム関税の対象国に含まれていたため、今回も影響を受けることが予想されます。
◉なぜ日本も関税対象国になるのか
・米国の対日貿易赤字が高い水準で推移している
トランプ大統領は貿易赤字の削減を重要な政策目標としており、日本との貿易不均衡を是正するために関税を外交手段として使用する可能性があります。
・円安により日本の防衛費増額の効果が薄れている
日本は防衛費の増額を約束していますが、円安の影響で実質的な防衛費増額の効果を損なっていると認識され、関税政策の根拠の一つとされる可能性があると言われています。
・日本が米国債の最大の外国購入者である
日本は米国債の最大の外国購入者であり、米国の債務調達を支援する国として評価されています。一方で、トランプ陣営ではこのような国外からの大規模な米国債購入が、結果的に米国の貿易赤字を助長しているという解釈をしている側面もあるとみられています。
◉特に影響を受ける可能性が高いとされる産業
・自動車、同部品(2023年米国の対日輸入額の33.6%)
・一般機械(同23.8%)
・電気機器(同12.9 %)
これらの産業に追加関税が課された場合、日本企業の利益が圧迫される恐れがあります。特に自動車産業は、日本からの輸出の方が現地生産よりも利益率が高いとされるため、大きな影響を受ける可能性があります。また、メキシコやカナダに進出している日本企業も、これらの国々への関税政策の影響を受ける可能性があるとされています。
トランプ大統領は関税を「経済以外の分野でも非常に強力な手段」と述べており、トランプ政権の関税政策は通商(国家間で行われる商業活動や貿易)の目的だけではなく、外交問題解決(不法移民や麻薬流入阻止)の手段としても捉えられています。
◉相互関税
さらに、トランプ大統領は2025年2月の石破首相との日米首脳会談後の記者会見で「相互関税」の導入を発表しました。
相互関税とは、貿易相手国が課している関税率と同じ税率を米国も課す政策です。この政策は、貿易不均衡の是正を目的とし、貿易相手国の関税率が自国よりも高い場合に適用されます。
日本は、工業製品については米国からの輸入品への関税をほぼゼロにしているため、影響は限定的とみられています。しかし、農業分野の農産品(牛肉、穀物など)には、米国からの輸入品に対して関税が課されているため、それを理由に米国への自動車輸出等に高い関税率を課される可能性があると言われています。
3、為替市場への影響
トランプ大統領の就任は、日本の為替市場にも大きな影響を与え、円安・ドル高の傾向を強めています。
トランプ大統領就任直後、外国為替市場では1ドル=154円まで円高が進行しました。しかし、その後のカナダとメキシコへの関税検討発表により急激な円安に転じています。
◉輸入コストの上昇により、原材料や部品の調達費用が増加
円安の進行により、日本企業が海外から調達する原材料や部品の価格が上昇しています。原材料費の上昇を製品価格に転嫁できない場合、企業の利益率が低下します。一方で、製品価格を上げた場合は、価格競争力が低下する恐れがあります。また、コスト増加を抑えるため、企業は調達先や生産拠点の見直しを迫られたり、新規設備投資が抑制されたりする可能性があります。
◉食料品や原油などの輸入品の価格が上昇
円安の進行により、小麦、大豆、アメリカ産牛肉などの輸入食品の価格上昇が予想されています。また、円安の影響により、日本での原油輸入コストも上昇する可能性があります。
◉政策の不確実性
政策の不確実性とは、トランプ大統領の政策方針や実行の詳細が不明確であり、その影響を予測することが困難な状況を指します。それにより、為替レートの予測が困難になり、変動幅が拡大しています。
◉税制赤字の拡大
トランプ大統領の掲げる大規模な減税政策(個人所得税・法人税率の引き下げ)や社会保障制度の維持により、米国連邦政府の税収が大幅に減少する可能性が高く、財政赤字の拡大につながると予想されています。国債発行の増加が長期金利を押し上げる要因となったり、大幅な減税による米国経済が活性化したりなど、さまざまな要因が複合的に作用し、円安・ドル高傾向を強める可能性があると言われています。
4、金利への影響
トランプ大統領の政策は、減税政策や関税引き上げ、移民対策などと組み合わさり、アメリカのインフレ圧力を増大させ、日本の金利へも影響を与える可能性があります。
インフレ圧力とは、さまざまな要因により経済全体の物価水準を押し上げる力のことをいい、食糧価格の高騰やサービス価格の値上げなどに影響を与えます。
◉金利上昇圧力の増大
アメリカのインフレ率が上昇し、FRB(米連邦準備制度理事会:米国の中央銀行に相当する機関)が金利を高く維持する可能性が高まっています。これにより日米金利差が拡大し、日本の金利にも上昇圧力がかかる可能性があります。
◉日銀の追加利上げ
円安ドル高の進行により、日銀が追加利上げを検討する可能性が高まっています。政策金利を現行の0.25%程度から0.5%程度まで引き上げるのではないかと推測されています。
◉住宅ローンの金利上昇
日銀の追加利上げが行われた場合、2〜3ヶ月程度のタイムラグを置いて住宅ローンの変動金利が引き上げられる可能性があります。住宅ローンを検討している方は、変動金利の上昇リスクを考慮し固定金利型のローンを検討するなど備えが重要です。
5、住宅市場への影響
トランプ大統領の就任は、円安・ドル高の進行や米中関係の悪化により、日本の住宅市場にも影響を及ぼすと言われています。
◉建築コスト高騰
円安・ドル高の進行により輸入建材のコストが上昇し、住宅価格の上昇に繋がり、新築住宅の価格に影響を与える可能性があります。
◉不動産投資
米中関係の悪化により、中国の富裕層は資産分散の必要性を強く感じていると言われています。特に中国国内では不動産市場の低迷が続き、中古住宅価格も下落していることから、安定性と成長可能性を持つ日本の不動産に海外投資家の注目が集まっています。また、トランプ政権による減税政策はアメリカ経済を活性化させ、アメリカの富裕層の投資意欲を高め、高級住宅や投資用不動産への需要が増加する可能性があります。近年の円安により、日本の不動産は相対的に割安な投資対象となっており、海外の投資家による不動産投資が予想されています。
6、まとめ
今回は、「トランプ大統領就任による日本への影響」について解説しました。
トランプ大統領は、就任直後から様々な政策を積極的に打ち出しており、世界情勢は大きな転換期を迎えようとしています。
特に注目すべきは、長期化が予測される円安・ドル高の影響です。これに加えて、日本国内での深刻なコメ不足「令和のコメ騒動」によるお米の価格高騰や、電気料金の値上げなど、物価上昇が私たちの暮らしを直撃しています。
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