給与から天引きされる社会保険、労働保険を解説!
給与から天引きされる社会保険、労働保険を解説!
お米にお菓子、電気代……。
身近な物の値段が上がり、物価高騰を肌で感じている方も多いと思います。
「もっと手取り収入が増えたらいいのに!」と、給与明細に目をやると健康保険や厚生年金、雇用保険などが天引きされている……。
今回は、給与から天引きされる「社会保険」や「労働保険」について詳しく解説していきます。
物価高騰には、長引く円安も大きく影響しています。日本では、原油や医薬品、食品などの多くを輸入品に頼っているため、円安による個人の生活面への影響が出ていると言えるでしょう。
円高・円安については、以前にこちらの記事で取り上げておりますので、是非、読んでみてください。
円高・円安はどっちがいい? メリット・デメリットや対策方法を徹底解説
その他、ご不明な点がございましたら当社FPへ、お気軽にご相談ください。
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給与の総支給額からは、社会保険料が天引きされています。
労働者やその家族が病気やケガに見舞われたり、失業や障害を負ってしまったりしたときに生活を保障する制度が社会保険制度です。
本記事では、それぞれの社会保険制度を詳しく解説しています。物価高騰により手取り所得を増やしたいと願う一方で、もしものときの生活を考えるための参考にしてみてください。
この記事の目次
1、 社会保険制度とは?
2、 社会保険について
・医療保険(健康保険・国民健康保険)
・介護保険
・年金保険
3、 労働保険について
・雇用保険
4、 まとめ:給与天引きされている社会保険料は手厚い補償
1、社会保険制度とは?
社会保険制度とは、加入者やその家族に病気やケガ、死亡や失業などが発生してしまった際に、生活を保障する制度です。
社会保険制度のうち、「(狭義の)社会保険」として、医療保険(会社員:健康保険、自営業者など:国民健康保険)、介護保険(40歳以上)、年金保険(厚生年金保険、国民年金)があります。また、「労働保険」として、労災保険や雇用保険があります。
健康保険、厚生年金保険、雇用保険は労使折半とされており、従業員の給料から会社が保険料を天引きして会社負担分を合わせて納めています。一方で労災保険は、全額が会社負担です。
今回は、給与から天引きされる「健康保険、介護保険、年金保険、雇用保険」について確認していきましょう。
2、 社会保険について
・医療保険(健康保険・国民健康保険)
まずは、医療保険について確認していきましょう。
会社員が加入する健康保険とは?
健康保険は、会社員本人(被保険者)やその家族(被扶養者)が業務外に病気やケガ、出産、死亡など発生した場合に保険給付を行う制度です。
健康保険の給付内容は、主に以下の通りです。
① 医療費
病気やケガをした際に、医療費の一部を自己負担として支払うだけで治療を受けることができます。
自己負担割合・・・小学校入学前の方は、2割負担
小学校入学以降70歳未満の方は、3割負担
70歳以上75歳未満の方は、2割負担(現役並み所得者は3割)
70歳以上の方は、1割(現役並み所得者は3割)
出典:厚生労働省『医療費の一部負担(自己負担)割合について』
② 高額療養費
同じ月に、同じ医療機関(入院・外来は別)に支払った自己負担額(入院時の食事代や差額ベッド代などを除く)が高額になった場合、一定の自己負担限度額を超えた部分が高額療養費として払い戻される制度です。
出典:全国健康保険協会「高額な医療費を支払ったとき(高額療養費)」
③ 傷病手当金
被保険者が、病気やケガで会社を休んだ時に給付を受けることができる制度です。
療養のため働くことができないこと(自宅療養含む)、連続3日間会社を休んでいること、給料が支払われないことなどの要件を満たしている場合に支払われます。
給付額は、4日目以降の休んだ日について支給されます。
支給期間は、支給を開始した日から通算して1年6ヶ月です。
出典:全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」
④ 出産手当金
被保険者が出産のために会社を休み、給与の支払いがない時に給付される制度です。支給期間は、出産の日以前42日(6週間:多胎妊娠は98日)から出産の翌日以後56日目(8週間)までの範囲内となります。
出産が予定日よりも遅れた場合は、遅れた日数分についても支給されます。
⑤ 出産育児一時金
被保険者およびその被扶養者が、妊娠4か月(85日)以上で出産された時に、1児につき50万円が支給される制度です。早産、死産、流産、人工妊娠中絶も支給対象となります。
⑥ 埋葬料・家族埋葬料
被保険者が亡くなった場合、埋葬を行うご家族に「埋葬料」として一律5万円が支給されます。また、被扶養者が亡くなった場合は、被保険者に、「家族埋葬料」として一律5万円が支給されます。
自営業者などが加入する国民健康保険とは?
健康保険の被保険者、被扶養者以外の人は、原則として住所地の市区町村の国民健康保険に加入します。
給付内容は会社員が加入する健康保険とほぼ同じですが、異なる点は原則として傷病手当金や出産手当金の給付がないことがあげられます。また、国民健康保険は被扶養者制度がないため、子どもや配偶者なども加入が必要となります。
・介護保険
次に、介護保険について確認していきましょう。
介護保険は、老化や病気などによって介護が必要になった人や家族の負担を軽減するために、社会全体で介護を支えあう制度です。
介護保険制度の被保険者(加入者)は、年齢によって第1号被保険者と第2号被保険者に区別されます。
第1号被保険者・・・65歳以上の者
給付要件 ・・・要介護状態(寝たきり、認知症等で介護が必要な状態)、要支援状態(日常生活に支援が必要な状態)と認定されたとき
第2号被保険者・・・40歳以上65歳未満の医療保険加入者
給付要件 ・・・要介護、要支援状態が、末期がん・関節リウマチ等の加齢に起因する疾病(特定疾病)によると認定されたとき
介護給付の自己負担額は、1割です。
介護区分に応じて利用限度額があり、限度額を超えてサービスを利用した場合の超過分は全額自己負担となります。また、施設サービス等を利用した時の食費や居住費なども自己負担となります。
・年金保険
公的年金は、加入者または加入者であった人が老齢になったときの「老齢給付」、障害を負ってしまったときの「障害給付」、また加入者が死亡したときに遺族に支給される「遺族給付」が支払われる制度です。
老齢年金
老齢基礎年金は、受給資格期間を満たすことにより65歳から支給されます。なお、60歳から繰り上げて減額された年金を受給する「繰上げ受給」や、66歳以後に繰り下げて増額された年金を受給する「繰下げ受給」の制度もあります。
障害年金
障害年金は、病気やケガにより生活や仕事などが制限される場合に年金が支払われる制度です。厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」、国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」が支給されます。
遺族年金
遺族年金は、加入者が亡くなったときに、その方と生計維持関係にあった遺族に年金が支払われる制度です。国民年金に加入されている方の「遺族基礎年金」と厚生年金保険に加入されている方の「遺族厚生年金」があります。「遺族基礎年金」は、亡くなった方の保険料納付済期間などにかかわらず定額での支給となります。また、「遺族厚生年金」は、亡くなった日以前の厚生年金保険の加入期間に基づく報酬比例の額に基づき計算されます。
3、 労働保険について
・雇用保険
雇用保険は、労働者が失業した場合や雇用の継続が困難になったときなどに生活に必要な給付(失業等給付)を行う制度です。また、失業の予防や労働者の能力開発および向上、その他労働者の福祉の増進等を図るための事業(雇用保険二事業)もあります。
企業に雇用される労働者は、原則として雇用保険の被保険者となります。ただし、パートや派遣労働者などについては、1週間の所定労働時間が20時間以上、かつ31日以上の雇用見込がある場合に被保険者とされています。
また、雇用保険の保険料は労使折半負担です。
失業等給付の給付内容は、主に以下の通りです。
① 求職者給付 ・・・失業者が求職活動中に支給
基本手当:被保険者であった方が離職した場合に、求職者の失業中の生活の安定を図りつつ求職活動を容易にすることを目的とし、支給されるのが「基本手当」です。
基本手当が支給される要件は、原則として離職の日以前2年間に、賃金が支払われた基礎日数が11日以上ある月が通産して12ヶ月以上あることなどがありま
す。
② 就職促進給付・・・早期に再就職したときに支給
再就職手当:基本手当の受給資格者が、所定給付日数の3分の1以上を残して安定した職業に就職するなどの要件を満たした場合に、一時金が支給されます。支給額は、基本手当の所定給付日数に対する支給残日数の割合に応じ算出されます。
③ 教育訓練給付・・・労働者の能力向上のために支給
教育訓練給付:雇用保険の被保険者期間が3年以上である者が、厚生労働大臣の指定する教育訓練を修了するなどの要件を満たした場合に、受講料などが支給されます。
④ 雇用継続給付・・・高齢になっても働く場合や育児・介護休業を取得した場合に支給
高年齢雇用継続給付:高年齢者の就業意欲を維持・喚起し、65歳までの雇用継続を援助・促進することが目的の制度です。60歳以後の賃金が低下したときに、給付金が
支給されます。
育児休業給付:原則として、1歳未満の子を養育するために育児休業を取得した場合に給付金が支給されます。支給額は、休業開始から6か月までは休業時賃金日額の67 %、それ以降は50%となります。
介護休業給付:配偶者や父母および子などの対象となる家族を介護するために介護休業を取得した場合に給付金が支給されます。支給額は、休業開始時賃金日額の67%となります。対象の家族1人につき3回まで、介護休業開始日から通算して93日までが支給期間です。
4、まとめ:給与天引きされている社会保険料は手厚い補償
今回は、「健康保険、介護保険、年金保険、雇用保険」について解説しました。
社会保険料は毎月の給与から天引きされているので、普段の生活ではあまり気にすることがないかもしれません。ですが、病気やケガで働けなくなったときや求職中などに給付金を受け取ることができる手厚い補償と言えるでしょう。
しかし、社会保険だけでは、もしものときの備えとしては不十分な場合もあります。まだまだ長引く物価高騰の時代です。将来の備えに不安になった場合や、その他お金の話についてさらに詳しく知りたい等ございましたら、当社FPへお気軽にご相談ください。