満期保険金の確定申告は不要?
必要なケースや税金について解説します
満期保険金の確定申告は不要?
必要なケースや税金について解説します
養老保険や学資保険などが満期を迎えた場合「満期保険金の確定申告は不要?必要?」と疑問に感じる方もいるでしょう。
基本的には不要ですが、条件によっては一部確定申告が必要になることもあります。
満期保険金の確定申告が不要・必要なケース
保険料を支払っている人が満期保険金を一括で受け取った場合は「一時所得」になります。
保険料を支払っている人が満期保険金を年金として受け取った場合は「雑所得」扱いです。
条件によって確定申告の必要性が異なるため、必要なケースと不要なケースを確認しておきましょう。
参考:国税庁「No.1755 生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき」
確定申告が不要
保険期間が5年以下の場合は「金融類似商品」扱いになり、源泉徴収で課税手続きが完結するため、確定申告が不要です。
また以下の条件を満たすときには、年末調整で税額清算がされるため、原則確定申告は必要ありません。
会社など1か所から給与の支払いを受けており、給与などの収入金額が2,000万円以下
参考:国税庁「No.1903 給与所得者に生命保険の満期返戻金などの一時所得があった場合」
満期保険金の年末調整の書き方は会社の案内に沿って行いましょう。
ただし「給与所得および退職所得以外の所得金額」が満期保険金の受領などの一時所得のみで、課税対象金額が20万円以上になる場合は確定申告が必要です。
確定申告が不要かどうかを確かめるには、課税対象金額を計算しておくとよいでしょう。
確定申告が必要
以下の条件に当てはまる場合は、給与所得者であっても確定申告が必要です。
<確定申告が必要になる条件>
・保険料の支払者が満期保険金を受け取る場合
・保険期間が5年以上
・給与の年間収入額が2,000万円以上
・1か所から給与を受け取っており、給与所得と退職所得以外の所得合計額が20万円以上
・2か所以上から給与を受け取っており、給与の全部が源泉徴収の対象の場合、年末調整されなかった給与の収入金額と、給与所得と退職所得以外の所得合計額が20万円以上
・同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料などの受け取りがある
・災害免除法により源泉徴収の猶予を受けている
・源泉徴収義務のない企業などから給与を受け取っている
・退職所得の税額が源泉徴収された金額よりも多い
参考:国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」
満期保険金を据え置くケースでも、満期日に保険金を受け取ったことになるため一時所得の対象です。
この場合も確定申告をしなければなりません。
確定申告が必要かどうかの判断に迷う場合は、国税庁の「税務相談チャットボット(ふたば)」の活用もおすすめです。
「確定申告が必要か判断する」のメニューを開き、質問に答えることで確認ができます。
課税金額・雑所得の計算方法
ここからは課税金額と雑所得の計算方法を、国税庁の案内を元に解説します。
一時所得の課税対象金額の計算方法
一時所得の課税対象金額は、保険金の全額ではありません。
満期保険金から支払い保険総額や余剰金、特別控除の50万円などを差し引き、さらに1/2にしたものが課税対象となります。
計算式は以下の通りです。
<生命保険の満期返戻金などによる一時所得の計算方法>
・一時所得の金額 = 満期保険金 – (支払保険料総額 – 剰余金) – 50万円(50万円に満たない場合にはその金額)
・課税の対象となる金額 = 一時所得の金額 × 1/2
引用:国税庁「No.1903 給与所得者に生命保険の満期返戻金などの一時所得があった場合」
一時所得では税額が低くなる計算方法になっています。
そのためほとんどの場合、保険満期金に税金がかかることはありません。
雑所得の計算方法
保険料を支払っている人が満期保険金を年金として受け取る場合、雑所得の計算方法は以下の通りです。
<雑所得の金額の計算方法>
・雑所得の金額=その年中に受け取った年金の額 – その金額に対応する払込保険料または掛金の額
参考:国税庁「No.1610 保険契約者(保険料の負担者)である本人が支払を受ける個人年金」
年金の年額から保険料や掛金を差し引いた残額が25万万円以上の場合、年金を受け取る際に所得税と復興所得税の10.21%が源泉徴収されます。
<所得税と復興所得税の計算方法>
・(年金の額 – その年金の額に対応する保険料または掛金の額)×10.21%
贈与税がかかるケース
保険料の支払者と受取人が異なる場合は贈与税にあたり、受取人が確定申告をしなければなりません。
贈与は「一般贈与」と「特例贈与」に区分されており、計算で使用する税率や控除額が異なります。
それぞれの概要について把握しておきましょう。
一般贈与財産
親から未成年の子や兄弟間、夫婦間での贈与は「一般贈与財産」扱いになります。
基礎控除110万円を差し引いた後の金額に対する税率と控除額は国税庁ホームページをご確認ください。
参考:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
金額に応じて税率が上がりますが、控除額も増える仕組みです。
特例贈与財産
「特例贈与財産」は直系尊属(父母や祖父母など)から贈与により取得した財産に係る贈与税の計算に使用します。
税率と控除額は国税庁ホームページをご確認ください。
参考:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
一般控除に比べて課税金額あたりの税率は抑えられているものの、控除額は低い傾向にあります。
贈与税の計算方法
贈与税の計算方法は以下の通りです。
<贈与税の計算方法>
・贈与税=1年間(1月1日~12月31日)で受け取った金額 – 110万円×税率
参考:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
まずは該当する贈与が「一般贈与財産」と「特例贈与財産」のどちらに当たるのかを確認しましょう。
そのうえで1年間に受け取った金額を合計、基礎控除を差し引きし、該当の税率で計算します。
満期保険金の税金シミュレーション
ここからは学資保険を例に所得税と贈与税の税金シミュレーションを解説します。
受取人や課税金額によって税金が異なることに注意しながら確認していきましょう。
所得税の税金シミュレーション
学資保険の満期金を、保険料を支払った父が受け取った場合のシミュレーションです。
<条件>
・満期金:200万円
・支払った保険料の合計額:170万円
・保険料を支払った人:本人
・満期保険金を受け取った人:本人
この場合一時所得を以下のように計算します。
<計算式>
・(満期保険金 – 支払保険料総額 – 一時所得の特別控除額50万円)×1/2=一時所得
(200万円 – 170万円 – 50万円)×1/2=-10万円
計算後、一時所得が-10万円になりました。
そのため今回のケースでは一時所得の課税対象ではありません。
贈与税の税金シミュレーション
父が保険料を支払った学資保険の満期金を、成人している子が受け取った場合でシミュレーションしてみましょう。
成人した子への贈与は「特別贈与」にあたります。
<条件>
・満期金:500万円
・保険料を支払った人:父
・満期保険金を受け取った人:22歳の子
・贈与税の区分:特例贈与
この場合の贈与税の計算方法は以下の通りです。
<計算式>
・満期保険金 – 基礎控除額110万円=基礎控除後の金額
500万円 – 110万円=390万円
・基礎控除後の金額×税率 – 控除額=贈与税額
390万円×15% – 10万円=48万5,000円
今回のケースでは満期金を受け取った子に対して、48万5,000円の贈与税が課税されます。
よくある質問
最後に満期保険金の確定申告について、よくある質問にお答えします。
満期保険金を確定申告しないとどうなる?
保険会社が受取人に一定額以上の保険金を支払う場合、保険会社から税務署に「支払調書」の提出が義務化されています。
支払調書とは、保険満期金などの支払いをした事業者が、税務署に提出する書類のことです。
書類には保険満期金の金額や支払日、被保険者の氏名や住所などが記載されています。
税務署は支払調書により、金額を受け取った人の申告漏れなどを確認します。
満期保険金を確定申告しないと、税務署から連絡がくる、加算税が課されるといった可能性があるため注意しましょう。
解約返戻金を確定申告しないとどうなる?
解約返戻金とは保険の解約をした際に支払われるお金のことです。
一時払いの金額が100万円を超える場合は、解約返戻金の支払調書が提出されます。
解約返戻金も確定申告をしないと、税務署からの連絡や、ペナルティとして課税が加算されるケースがあります。
会社員の方は年末調整で税額が清算されるため、基本的に満期保険金の確定申告は必要ありません。
ただし、「給与所得および退職所得以外の所得金額」が満期保険金の受領などの一時所得のみで、課税対象金額が20万円以上になる際には確定申告が必要です。
また保険料を支払った人と満期保険金を受け取る人が異なる場合には、贈与税の対象となることに注意しましょう。
満期保険金の確定申告をしないと支払調書により税務署から連絡が入る可能性があります。
満期保険金の確定申告について理解し、正しく手続きできるようになりましょう。
不明な点等ございましたら担当FPまでご気軽にご連絡ください。